会社を辞めるとき、次の会社に入るとき。やらなければいけない手続きは、思っている以上にたくさんあります。
しかも子どもがいると、健康保険や年金に加えて、保育園、児童手当、子どもの扶養といった手続きまで重なります。どれも期限つきで、忘れると損をしたり、あとで保険料をまとめて請求されたりするものばかりです。
先に結論を書きます。
手続きの量は「退職日の翌日に、次の会社に入っているかどうか」で大きく変わります。
空白なしで転職するなら、自分でやることは少なく、ほとんどは会社が進めてくれます。
空白があるなら、14日・20日という短い期限のある手続きを、自分で進める必要があります。
この記事では、まず自分がどちらに当てはまるかを確認してから、やることを期限の順に整理します。子育て世帯が見落としやすい手続きは、別にまとめて載せています。
※制度に関する記述は2026年9月26日時点で確認したものです。
まず確認:あなたは「空白なし」と「空白あり」のどっち?
| 空白なし | 空白あり | |
|---|---|---|
| 状況 | 退職日の翌日に、次の会社に入社している | 退職してから入社まで、1日でも間がある/次が決まっていない |
| 健康保険 | 転職先の健康保険に入る | 自分で選んで加入する(任意継続・国民健康保険・家族の扶養) |
| 年金 | 転職先の厚生年金に入る | 国民年金に自分で切り替える |
| 手続きの主体 | ほとんど会社 | ほとんど自分 |
| 期限の厳しさ | ゆるい | 14日〜20日の期限が多い |
「空白」は1日でも空白です。たとえば3月31日に退職して、4月1日に入社するなら空白なし。3月31日に退職して4月2日に入社するなら、4月1日の1日分が空白になります。
この違いがあとの手続きをすべて左右するので、退職日と入社日は、できるだけ連続させるのがいちばんの手続き対策です。
月末退職と、月末より前の退職の違い
退職日をいつにするかで、社会保険料のかかり方も変わります。
健康保険と厚生年金は、退職日の翌日に資格がなくなります。そして保険料は、資格がなくなった日が属する月の前の月の分までかかる仕組みです。
- 月末に退職(例:3月31日)→ 資格がなくなるのは4月1日 → 3月分までは会社の保険
- 月末より前に退職(例:3月30日)→ 資格がなくなるのは3月31日 → 3月分は国民健康保険と国民年金に自分で入って払う
翌月1日に入社するなら、月末退職にすれば空白ができず、手続きがいちばん少なくて済みます。退職日を決めるときに、一度カレンダーを確認しておきましょう。
退職前にやること(全員共通)
受け取る書類を確認する
退職時に会社から受け取る書類は、次の手続きで必要になります。受け取り漏れがないように、退職前に人事担当者に確認しておきましょう。
| 書類 | 何に使うか | 受け取るタイミングの目安 |
|---|---|---|
| 源泉徴収票 | 転職先の年末調整/確定申告 | 退職後1か月以内 |
| 雇用保険被保険者証 | 転職先での雇用保険の手続き | 退職時(会社が保管している場合も) |
| 離職票 | ハローワークで失業給付を受ける(空白ありの人) | 退職後10日前後 |
| 健康保険の資格喪失を証明する書類 | 国民健康保険への加入 | 求めれば発行される |
| 基礎年金番号がわかるもの | 転職先での年金の手続き | 手元の年金手帳・基礎年金番号通知書 |
返すものを確認する
健康保険の資格確認書(持っている場合)、社員証、会社から借りているパソコンや制服などは返却します。
企業型確定拠出年金(DC)に入っているか確認する
会社で企業型の確定拠出年金に入っている人は、退職後6か月以内に、転職先の制度かiDeCo(個人型)へ移す手続きが必要です。放っておくと自動的に別の機関へ移され、手数料がかかるうえに運用もされなくなります。
空白なしで転職する人のチェックリスト
空白なしの人は、ほとんどの手続きを転職先の会社が進めてくれます。あなたがやるのは、主に書類を渡すことと、家族と子どもの手続きです。
□ 書類を転職先に渡す
- 源泉徴収票(その年の年末調整で使う)
- 雇用保険被保険者証(または雇用保険の番号)
- 基礎年金番号がわかるもの
□ 扶養している家族の健康保険の手続き
見落としやすいのがここです。子どもや配偶者を自分の健康保険で扶養している場合、転職先の健康保険で、家族を扶養に入れる手続きを改めて行う必要があります。
前の会社の健康保険を抜けた時点で、家族もいっしょに抜けています。入社時の書類に「被扶養者」の欄があれば、忘れずに記入してください。
□ 配偶者の年金(配偶者を扶養している場合)
配偶者が国民年金の第3号被保険者(会社員の妻・夫として扶養されている人)なら、転職先の会社を通して届出が必要です。入社手続きのときに伝えましょう。
□ 住民税
転職先でも給与から天引き(特別徴収)を続けたい場合は、前の会社に「給与所得者異動届出書」を作ってもらい、転職先に引き継ぎます。
退職のタイミングによっては、残りの住民税がまとめて天引きされることがあります。詳しくは下の「住民税」の項目を見てください。
□ 子どもの手続き(→ 下の「子育て世帯が見落としやすい手続き」へ)
保育園への届出、子ども医療費助成の登録変更などがあります。
空白ありの人のチェックリスト(期限の順)
空白がある人は、手続きの多くを自分で、期限内に進める必要があります。期限の短いものから順に並べます。
□【14日以内】国民年金への切り替え
退職日の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の窓口で、国民年金(第1号被保険者)への切り替え手続きをします。退職日がわかる書類(離職票など)が必要です。
配偶者を扶養していた人は要注意です。 あなたが会社を辞めると、扶養されていた配偶者も同時に第3号被保険者の資格を失います。配偶者も国民年金への切り替えが必要です。
退職で保険料の支払いが苦しいときは、失業による特例免除を申請できます。窓口で相談してみてください。
□【14日〜20日以内】健康保険を選んで加入する
空白がある人は、次の3つから選んで加入します。どれにも入らない期間は作れません。
| 選択肢 | 期限 | 保険料 | 扶養していた家族 |
|---|---|---|---|
| 任意継続(前の会社の健康保険を続ける) | 退職日の翌日から20日以内 | 在職中の約2倍(会社負担分も自分で払う。上限あり) | 保険料はかからない(そのまま扶養できる) |
| 国民健康保険 | 退職日の翌日から14日以内 | 前の年の所得と、加入する人数で決まる | 扶養の仕組みがなく、家族も1人ずつ加入者になる |
| 家族の扶養に入る | 家族の勤務先を通して | かからない | ― |
※任意継続は、退職日までに続けて2か月以上、健康保険に入っていたことが条件です。加入できるのは最長2年で、途中でやめることもできます。 ※国民健康保険は14日を過ぎても加入できますが、保険料は退職日の翌日の分までさかのぼって請求されます。
子育て世帯は「任意継続」と「国民健康保険」を必ず比べる
子どもがいる家庭で、いちばん差が出るのがここです。
- 任意継続は、扶養している家族が何人いても、家族の分の保険料はかかりません
- 国民健康保険には扶養という考え方がなく、家族も1人ずつ加入者になります。保険料のうち、加入者の人数に応じてかかる部分(均等割)が、家族の人数分増えます
なお、国民健康保険では小学校入学前の子どもの均等割が5割軽減されます(手続きは不要で、自動的に適用されます)。
一般的には、扶養している家族が多いほど任意継続が有利になりやすいと言えます。ただし国民健康保険の保険料は前の年の所得や住んでいる自治体によって大きく変わるので、どちらが安いかは家庭によって違います。
必ず両方の金額を出してから決めてください。
- 任意継続の保険料 → 加入していた健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に問い合わせる
- 国民健康保険の保険料 → 市区町村の窓口で試算してもらう
□【離職票が届いたら】雇用保険(失業給付)の手続き
次の仕事が決まっていない人は、離職票をもってハローワークで手続きをすると、失業給付(基本手当)を受け取れます。
自分の都合で退職した場合、以前は給付が始まるまで原則2か月待つ必要がありましたが、2025年4月1日以降に退職した人は原則1か月に短縮されました。
ただし、次のような例外があります。
- 退職日からさかのぼって5年間に、自己都合退職で失業給付の受給資格の決定を2回以上受けている場合は、3か月
- 退職日前の1年以内に、対象となる教育訓練を受けていた場合などは、待つ期間がなくなる(2025年4月1日以降に受講を開始したものが対象)
□ 住民税の支払い方法を確認する
住民税は、前の年の所得にかかる税金を、6月から翌年5月にかけて払う仕組みです。つまり、会社を辞めたあとも、前の年の分の住民税の支払いは続きます。
| 退職した時期 | 残りの住民税の払い方 |
|---|---|
| 1月〜4月 | 5月までの残りの分が、最後の給与からまとめて天引きされる(最後の給与が少ない場合などは、自分で払う方法に切り替わることも) |
| 6月〜12月 | まとめて天引きしてもらうか、自分で払う(普通徴収)かを選べる |
自分で払う場合は、市区町村から納付書が届きます。「退職したら住民税の請求が来た」と驚く人が多いのですが、これは前の年の所得の分です。
年収が下がる転職では、この仕組みのせいで家計が苦しくなりやすいので、別の記事で詳しく書いています。
□【年明け】確定申告(その年のうちに再就職しなかった場合)
年内に再就職すれば、前の会社の源泉徴収票を転職先に出して、年末調整で済みます。年内に再就職しなかった場合は、翌年に自分で確定申告をします。払いすぎた所得税が戻ってくることが多いので、忘れずに行いましょう。
子育て世帯が見落としやすい手続き
ここからは、子どもがいる家庭に特有の手続きです。転職情報サイトの手続き一覧には、たいてい載っていません。
□ 保育園:勤務先が変わったことの届出
保育園に通える条件は、「保護者が働いていること」をもとに認定されています。勤務先が変わったら、市区町村の窓口に届け出て、新しい会社の就労証明書を出すのが一般的です。
空白がある人はさらに注意が必要です。仕事をしていない期間は「求職活動中」の扱いになり、決められた期限までに次の仕事に就かないと、原則として退園になります。期限は自治体によって違い、「3か月」とは限りません。
□ 児童手当:公務員から民間、民間から公務員に移るときだけ申請が必要
児童手当は、会社員なら住んでいる市区町村から、公務員なら勤務先から支給されます。
そのため、公務員から民間企業へ、または民間企業から公務員へ転職するときは、翌日から15日以内に申請が必要です。申請が遅れると、遅れた月の分は原則として受け取れません。
民間企業から民間企業への転職で、住所も変わらないなら、児童手当の手続きは必要ありません。
□ 子ども医療費助成:保険が変わったら登録内容の変更
多くの自治体では、子どもの医療費を助成する制度(乳幼児医療証・子ども医療証など)に、加入している健康保険の情報を登録しています。健康保険が変わると、変更の届出が必要な自治体が多いので、保険が切り替わったら確認してください。
□ 子どもの扶養の手続き
「空白なし」のところでも書いたとおり、子どもを扶養している人が転職したら、転職先の健康保険で子どもを扶養に入れる手続きが必要です。空白がある人は、上で選んだ健康保険に応じて手続きをします。
夫婦共働きの場合、子どもをどちらの扶養に入れるかは、一般的に収入の多いほうが基準になります。転職で収入が逆転する場合は、扶養の入れ方を見直す必要があるかもしれません。加入している健康保険に確認してください。
健康保険証について知っておきたいこと(2026年8月から変わりました)
以前の健康保険証(カード型・紙の保険証)は、2026年8月1日から使えなくなりました。 現在、病院にかかるときは次のどちらかが必要です。
- マイナ保険証(健康保険証として利用登録したマイナンバーカード)
- 資格確認書(加入している健康保険から交付される書類)
転職で健康保険が変わると、マイナ保険証に新しい保険の情報が反映されるまでに時間がかかることがあります。特に子どもが急に病院にかかる可能性がある家庭は、転職前後の受診方法を、転職先の人事や加入先の健康保険に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q. 退職日の翌日に入社します。自分で何か手続きは必要ですか? 健康保険や年金の手続きは、基本的に転職先の会社が進めてくれます。あなたがやるのは、源泉徴収票などの書類を渡すことと、家族を扶養に入れる手続き、保育園への届出などの子どもの手続きです。
Q. 国民健康保険の手続きが14日を過ぎてしまいました。 14日を過ぎても加入できます。ただし保険料は退職日の翌日の分までさかのぼって請求されます。また、加入するまでの間に病院にかかった分は、あとから精算が必要になることがあります。気づいた時点ですぐに手続きしてください。
Q. 任意継続と国民健康保険、どちらがいいですか? 家庭によって違います。一般的には扶養している家族が多いほど任意継続が有利になりやすいですが、国民健康保険の保険料は前の年の所得や自治体で大きく変わります。必ず両方の金額を出して比べてください。
Q. 退職したら住民税の納付書が届きました。払わないといけませんか? 払う必要があります。住民税は前の年の所得にかかる税金で、退職後も支払いが続きます。
Q. 夫(妻)の扶養に入っていました。夫(妻)が退職したら、私も手続きが必要ですか? 必要です。夫(妻)が会社を辞めると、扶養されていたあなたも健康保険と年金の資格を失います。空白なしで転職するなら転職先で扶養の手続きを、空白があるなら国民年金への切り替えと、健康保険の加入が必要です。
まとめ
- 手続きの量は、退職日の翌日に次の会社に入っているかで決まる。できるだけ退職日と入社日を連続させる
- 空白があるなら、国民年金(14日)・国民健康保険(14日)・任意継続(20日)の期限に注意する
- 子育て世帯は、任意継続と国民健康保険の保険料を必ず比べる。扶養している家族が多いほど任意継続が有利になりやすい
- 保育園・児童手当・子ども医療費助成・子どもの扶養は、転職サイトの手続き一覧に載っていないことが多い。自分で確認する
手続きは面倒ですが、期限さえ押さえておけば、ほとんどは窓口に行けば教えてもらえます。まずはこのチェックリストで、自分に関係する項目に印をつけるところから始めてみてください。
参考にした情報
- 任意継続|全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 会社を退職したときの国民年金の手続き|日本年金機構
- 児童手当制度のご案内|こども家庭庁
- 令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます|厚生労働省
- iDeCo加入者で転職・退職された方へ|iDeCo公式サイト
- 期限切れの健康保険証、2026年8月からは使えない|第一生命経済研究所
※本記事の制度に関する記述は、2026年9月26日時点で確認したものです。制度や自治体の運用は変わる場合があります。実際の手続きにあたっては、加入している健康保険、年金事務所、お住まいの市区町村にご確認ください。
