「転職したい。でも、子どもが保育園を退園になったらどうしよう」
子どもを保育園に預けながら働いていると、転職を考えたとき、真っ先にこの不安が頭をよぎります。次の仕事が見つかっても、子どもが保育園に通えなくなったら働けない。かといって、今の職場を続けるのもつらい。
先に結論を書きます。
転職そのもので退園になることは、基本的にありません。危ないのは「先に辞めて、それから次を探す」パターンだけです。そしてその場合の猶予は、よく言われる「3ヶ月」とは限りません。お住まいの自治体によっては、もっと短いことがあります。
私は人材業界に2社いて、その後自分でも2回転職しました。今は子ども2人を育てながら働いています。
この記事では、退園にならずに転職するために知っておくべき仕組みと、動く順番を、法令の条文をもとに整理します。
※制度に関する記述は2026年9月19日時点で確認したものです。
結論:退園のリスクがあるのは「辞めてから探す」ときだけ
転職のしかたは、大きく2つに分かれます。
| 在職中に次を決めてから辞める | 辞めてから次を探す | |
|---|---|---|
| 保育園に通える理由 | 「働いている」のまま | 「求職活動中」に切り替わる |
| 期限 | なし | あり(最長でも90日+月末まで) |
| 保育時間 | 新しい職場の勤務時間で決まる | 短くなる場合がある |
| 必要な手続き | 勤務先が変わったことの届出 | 求職活動への変更の届出 → 就職後にもう一度届出 |
左側なら、保育園の心配はほとんどいりません。問題になるのは右側です。
なぜそうなるのかを理解するために、まず「保育園に通える条件」から見ていきます。
そもそも、保育園に通える条件は?
認可保育園や認定こども園に子どもを預けるには、自治体から「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。
簡単に言えば、「この家庭には、日中に子どもを家で見られない理由がある」と認めてもらう仕組みです。その理由は法令で決まっていて、代表的なのが「働いていること」です。
「働いている」とみなされる基準は、自治体によって違う
子ども・子育て支援法施行規則は、「働いている」ことの基準を次のように定めています。
一月において、四十八時間から六十四時間までの範囲内で月を単位に市町村が定める時間以上労働することを常態とすること。
(子ども・子育て支援法施行規則 第1条の5第1号)
つまり、月48時間以上で認める自治体もあれば、月64時間以上を求める自治体もあります。
フルタイムの正社員なら、どちらでもまず問題になりません。ただ、パートや短時間勤務の仕事に移る場合は、転職先の勤務時間がお住まいの自治体の基準を満たしているか、確認しておく必要があります。
「求職活動中」も、認定の理由になる
同じ条文には、働いていること以外の理由も並んでいます。そのひとつが求職活動です。
求職活動(起業の準備を含む。)を継続的に行っていること。
(同 第1条の5第6号)
つまり、仕事を辞めても、すぐに保育園に通えなくなるわけではありません。「次の仕事を探している」ことも、保育が必要な理由として認められています。
ただし、こちらには期限があります。ここがこの記事でいちばん大事なところです。
辞めてから転職活動する場合の「期限」
期限は「90日を上限に、自治体が決める」
求職活動を理由にした認定の期間は、施行規則で次のように決まっています。
効力発生日から、同日から起算して九十日を限度として市町村が定める期間を経過する日が属する月の末日までの期間
(子ども・子育て支援法施行規則 第8条第4号ロ)
少し読みにくいので、分解します。
- 「九十日を限度として」 → 90日は上限です
- 「市町村が定める期間」 → 実際の日数は、自治体が90日以内で決めます
- 「経過する日が属する月の末日まで」 → その日を含む月の、月末まで伸びます
ネット上では「退職しても3ヶ月は保育園に通える」とよく書かれています。これは、90日を採用している自治体なら正しい説明です。ただ、90日より短い期間を定めている自治体もあります。
「3ヶ月あるから大丈夫」と思って辞めたら、実際には2ヶ月だった——ということが起こりえるわけです。
期限の数え方の例
仮に、求職活動としての認定が4月16日から始まったとします。
| 自治体が定める期間 | 期間が経過する日 | 保育園に通える期限 |
|---|---|---|
| 90日 | 7月14日 | 7月31日 |
| 60日 | 6月14日 | 6月30日 |
同じ日に仕事を辞めても、住んでいる場所によって1ヶ月違うことがあります。
※認定がいつから始まるか(起算日)の扱いも、自治体によって異なります。上の表は考え方の例です。
期限までに仕事が決まらないと、原則として退園
期限までに新しい仕事に就けなかった場合、保育の必要性の認定がなくなり、保育園を利用できなくなります。たとえば堺市も、期間内に就労できなければ基本的に認定ができなくなる旨を案内しています。
延長できるかどうかも、自治体次第
期限の延長ができるかどうかも、自治体によって扱いが違います。延長できないと明記している自治体もあります。
延長はできない前提で動くのが安全です。
保育時間が短くなる場合がある
認可保育園の利用時間には、2つの区分があります。
| 区分 | 利用できる時間 |
|---|---|
| 保育標準時間 | 1日11時間まで(月平均275時間まで) |
| 保育短時間 | 1日8時間まで(月平均200時間まで) |
(子ども・子育て支援法施行規則 第4条)
求職活動中にどちらの区分になるかは、法令で一律には決まっておらず、自治体の運用によります。保育短時間に切り替わる場合があるので、面接の時間帯や送り迎えの予定に影響しないか、事前に確認しておくと安心です。
在職中に転職する場合の手続き
在職中に次の職場を決めてそのまま移る場合、「働いている」という理由は変わりません。変わるのは勤務先です。とはいえ、手続きは必要です。
勤務先が変わったら、届出が必要
保育の認定は、「どこで、どのくらい働いているか」をもとに出ています。勤務先が変わったら、自治体に届け出る必要があります。
届出先は、多くの場合、保育園ではなく市区町村の保育担当の窓口です。
新しい会社の「就労証明書」を用意する
届出の際には、多くの自治体で新しい勤務先が書いた就労証明書の提出を求められます。
ここでつまずきやすいのが、入社前に書いてもらえるのか、入社後でないと書けないのかという点です。会社によって対応が違います。
内定が出た段階で、人事担当者に「保育園の手続きで就労証明書が必要になります」と伝えておくと、あとで慌てずに済みます。
提出期限は自治体ごとに違う
届出の期限も自治体によって違います。「変更がある月の前月までに提出」としている区もあります。
退職日と入社日が決まったら、すぐにお住まいの自治体の窓口に確認してください。
勤務時間が変わるなら「区分変更」も
転職で勤務時間が大きく変わる場合は、先ほどの「保育標準時間/保育短時間」の区分が変わることがあります。
時短勤務からフルタイムに戻る、あるいはその逆の場合は、区分変更の届出もあわせて必要です。翌月1日から区分が変わる扱いにしている自治体があります。
ケース別:こんなときはどうなる?
退職日と入社日のあいだが空く
たとえば「3月31日で退職して、入社は4月15日」のように、あいだが空くケースです。
この期間は、働いていないことになります。自治体によっては、この空白期間について別途手続きが必要になる場合があります。
可能であれば、退職日と入社日を連続させるのがいちばん確実です。空いてしまう場合は、事前に自治体に相談しておきましょう。
有給休暇を消化している期間
退職前にまとめて有給休暇を使う場合、その期間も会社には在籍しています。そのため、一般的には働いている状態として扱われます。
育休中に転職したい
育児休業中の転職は、保育園だけでなく育児休業給付金の扱いも関わってくるため、別の記事で詳しく書きます。
引っ越しを伴う転職
市区町村が変わる引っ越しを伴う場合は、在園の継続とは別に、転居先の自治体での手続きが必要になります。転居先の自治体に早めに相談してください。
保育料は、転職ですぐ変わる?
年収が上がる転職でも下がる転職でも、保育料はすぐには変わりません。
認可保育園の保育料は、保護者の住民税の額をもとに決まります。多くの自治体では、4月〜8月分は前年度の住民税額、9月〜翌年8月分はその年度の住民税額で計算されます。住民税は前の年の所得で決まるので、転職で収入が変わっても、保育料に反映されるのは早くて翌年の9月以降です。
とくに注意したいのは、年収が下がる転職です。収入は先に下がるのに、保育料が下がるのは1年近くあと。その間の家計は、今より苦しくなります。転職を決める前に、この時間差も含めて家計を試算しておくことをおすすめします。
なお、3〜5歳児クラスの保育料は無償化の対象です(給食費などの実費は別)。ここで書いた話は、主に0〜2歳児クラスに子どもを預けている場合の話です。
退園にならずに転職するためのチェックリスト
- お住まいの自治体の「求職活動の期限」を確認する(90日か、それより短いか)
- 在職中に転職活動をする
- 退職日と入社日を連続させる
- 内定が出たら、就労証明書の段取りを新しい会社に確認する
- 勤務時間が変わるなら、区分変更もあわせて届け出る
- 届出の期限を自治体に確認する
とくに1と2が大事です。この2つを押さえておけば、「気づいたら退園になっていた」という事態はまず避けられます。
よくある質問
Q. 退職することは、保育園にいつ伝えればいい? 届出先は、多くの場合、保育園ではなく市区町村の保育担当の窓口です。期限は自治体によって違うので、退職日が決まったらすぐに確認してください。園にもあわせて伝えておくとスムーズです。
Q. 転職先の試用期間中でも「働いている」ことになる? 試用期間も雇用されて働いている期間なので、一般的には働いているものとして扱われます。心配な場合は自治体に確認してください。
Q. パートやアルバイトに転職しても大丈夫? 基準になるのは雇用形態ではなく、働く時間です。お住まいの自治体が定める時間(月48〜64時間の範囲)を満たしていれば、働いているものとして認められます。
Q. 夫婦のどちらが転職する場合でも同じ? 同じです。保育の必要性は、父母それぞれについて判断されるのが一般的です。転職するのが夫婦のどちらであっても、その人について届出が必要になります。
まとめ
- 転職そのもので退園になることは、基本的にない。危ないのは「辞めてから探す」ときだけ
- 辞めてから探す場合の期限は「90日を限度として市町村が定める期間」。3ヶ月とは限らない
- 在職中に次を決めて、退職日と入社日をつなげるのが、退園を避けるいちばん確実な方法
保育園のことが心配で転職に踏み切れない人は多いと思います。でも、仕組みがわかれば、気をつけるべきポイントは限られています。まずは、お住まいの自治体の期限を調べるところから始めてみてください。
転職するときに必要な手続きは「退職・転職の手続きチェックリスト【子育て世帯版】」に、保育料と住民税が遅れて変わる仕組みは「転職したら住民税はどうなる?」にまとめています。
参考にした情報
- 子ども・子育て支援法施行規則(e-Gov法令検索) — 第1条の5、第4条、第8条
- 求職活動による保育認定について(堺市)
※本記事の制度に関する記述は、2026年9月19日時点で確認したものです。制度や自治体の運用は変わる場合があります。実際の手続きにあたっては、必ずお住まいの自治体にご確認ください。
