「転職したら、住民税の納付書が家に届いた」 「年収が下がる転職をしたのに、住民税が全然下がらない」
転職と住民税の組み合わせは、戸惑う人がとても多いところです。
先に結論を書きます。
住民税は、前の年の所得にかかる「後払い」の税金です。
転職しても住民税の額はすぐには変わらず、変わるのは払い方だけです。
そして年収が下がる転職では、前の高い年収の住民税が1年以上続きます。 子育て世帯は保育料も同じ時間差で動くので、転職前に家計を試算しておくことが大切です。
この記事では、転職したときの住民税の払い方と、年収が下がる転職で気をつけたいことを、試算つきで整理します。
※制度に関する記述は2026年9月26日時点で確認したものです。
住民税の仕組みを3行で
- 前の年(1月〜12月)の所得に対してかかる
- それをその年の6月から翌年5月までの12か月で払う
- 会社員は、給与から天引きされる(これを「特別徴収」と呼ぶ)
税額は、標準的な場合、所得に応じた部分(所得割)が10%、所得に関係なく一律の部分(均等割など)が年5,000円です(自治体によって上乗せがあります)。
大事なのは1行目です。住民税は、今の収入ではなく、前の年の収入で決まります。 転職と住民税の「困った」は、ほぼすべてここから生まれます。
転職したときの住民税の払い方は3通り
会社を辞めると、それまでの給与天引きは止まります。残りの住民税は、次のどれかの方法で払います。
| 払い方 | どういうときに | あなたがやること |
|---|---|---|
| 転職先で天引きを続ける | 空白なしで転職し、手続きが間に合った | 前の会社に「転職先でも天引きを続けたい」と伝える |
| 最後の給与からまとめて天引き(一括徴収) | 1月〜4月に退職した(原則)/6月〜12月退職で本人が希望した | 特になし(最後の給与の手取りが減る) |
| 自分で納付書で払う(普通徴収) | 空白がある/切り替えが間に合わなかった | 市区町村から届く納付書で払う |
転職先で天引きを続けたいとき
前の会社に「給与所得者異動届出書」という書類を作ってもらい、転職先の会社に引き継ぎます。この書類が市区町村に届けば、転職先の給与から天引きが続きます。
退職前に人事担当者に「転職先でも住民税の天引きを続けたい」と伝え、転職先の会社名などを知らせておくとスムーズです。
自分で払う(普通徴収)とき
市区町村から納付書が届き、6月末・8月末・10月末・1月末の納期に分けて払います。年の途中で切り替わった場合は、残りの金額を残りの納期で払います。
1月〜4月に退職する人は、最後の給与に注意
1月1日から4月30日までに退職すると、5月までの残りの住民税を、最後の給与からまとめて天引きするのが原則です(地方税法)。
たとえば2月末に退職すると、3月・4月・5月の3か月分が、最後の給与から一度に引かれます。最後の給与の手取りが、思っていたより大きく減ることになります。
最後の給与が少なくて引ききれない場合などは、自分で払う方法に切り替わることもあります。
6月〜12月に退職する場合は、まとめて天引きしてもらうか、自分で払うかを選べます。
「転職したら住民税の納付書が届いた」のはなぜ?
転職後に納付書が届いて驚く人は多いのですが、たいていは次のどちらかです。
- 転職先で天引きを続ける手続き(異動届)が、間に合わなかった
- 退職から入社までに空白があった
いずれの場合も、払う必要があります。 ただし、二重に払うことにはなりません。天引きされた分と、納付書で払う分が重ならないように、市区町村が調整しています。
途中から転職先の天引きに戻したい場合は、転職先の会社に相談してください。手続きをすれば、残りの分を給与天引きに切り替えられることが多いです。
なお、手続きのタイミングによっては、天引きできなかった残りの分をまとめて納める扱いになる自治体もあります。納付書が届いたら、金額と納期を確認しておきましょう。
転職1年目の住民税はどうなる?
「新卒1年目は住民税がかからなかった」という記憶から、「転職1年目も住民税がないのでは」と考える人がいますが、転職1年目にも住民税はかかります。
新卒1年目に住民税がないのは、その前の年(学生時代)に所得がほとんどなかったからです。転職の場合は、前の年に前の会社で働いた所得があるので、その分の住民税が転職先の給与から天引きされる(または自分で払う)ことになります。
年収が下がる転職で気をつけること
ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。
子育て中の転職では、「残業が少ない会社」「時短で働ける会社」「通勤時間が短い会社」を選んだ結果、年収が下がることも珍しくありません。それ自体は、家族にとって正しい選択かもしれません。
ただ、年収が下がる転職には、税金と保育料の「時間差」という落とし穴があります。
住民税は、1年以上遅れて下がる
具体的な数字で見てみます。
例:4月に転職して、年収が600万円から450万円に下がった場合
| 期間 | 住民税の計算のもとになる年収 | 月々の住民税(目安) |
|---|---|---|
| 転職した年の6月〜翌年5月 | 転職前の年(600万円) | 約2.5万円 |
| 翌年6月〜翌々年5月 | 転職した年(1〜3月は600万円の水準、4〜12月は450万円の水準) | 約2.5万円と約1.7万円の間 |
| 翌々年6月〜 | 転職の翌年(450万円) | 約1.7万円 |
※社会保険料を年収の15%、配偶者を扶養していない、子どもは16歳未満として計算した概算です。実際の金額は、控除の内容や自治体によって変わります。
給与は4月から下がるのに、住民税はしばらく転職前の年収の水準のまま天引きされます。住民税が年収450万円の水準まで下がりきるのは、転職の翌々年の6月です。
その間、月々の手取りは「下がった給与 − 高いままの住民税」になり、想像以上に苦しく感じることがあります。
保育料も、同じように遅れて下がる
認可保育園の保育料は、保護者の住民税の額をもとに決まります。多くの自治体では、4月〜8月分は前の年度の住民税、9月〜翌年8月分はその年度の住民税で計算され、9月に切り替わります。
つまり保育料も住民税と同じく、年収が下がってから1年以上遅れて下がります。住民税と保育料の両方が「前の高い年収」のまま続く期間がある、ということです。
→ 保育料の仕組みは転職したら保育園は退園になる?で詳しく書いています
なお、3〜5歳児クラスは保育料の無償化の対象なので(給食費などの実費は別)、この影響を受けるのは主に0〜2歳児クラスです。
子どもがいても、住民税は安くならない
「子どもがいれば扶養控除で税金が安くなるのでは」と思うかもしれません。しかし、16歳未満の子どもは扶養控除の対象外です。小さい子どもがいても、住民税は子どもがいない人と同じように計算されます。
「子どもがいるから住民税は少ないはず」という前提で家計を組むと、見込みが外れるので注意してください。
転職を決める前に、1年分の家計を試算する
年収が下がる転職を考えているなら、内定を受ける前に、次の計算をしておくことをおすすめします。
- 転職先の月々の手取り(額面から、社会保険料と所得税を引いた額)
- そこから、前の会社の年収をもとにした住民税を引く
- さらに、前の年収をもとにした保育料を引く
- それで、転職後の最初の1年間の家計が回るかを確認する
この「最初の1年」を乗り越えられる見通しが立てば、年収が下がる転職も、家族にとって意味のある選択になります。
税金の面で得する転職の時期はある?
「転職は何月がいいか」を税金の面から考えると、住民税の総額で得する時期は、基本的にありません。 住民税は前の年の所得で決まるので、いつ転職しても払う額は同じです。
違いが出るのは、払うタイミングです。
- 1月〜4月に退職すると、残りの住民税を最後の給与からまとめて引かれるため、その月の手取りが大きく減る
- 6月〜12月に退職すると、まとめて引いてもらうか、自分で払うかを選べる
退職月の手取りが減っても困らないように、あらかじめ把握しておけば十分です。
よくある質問
Q. 退職したのに住民税を払わないといけないのですか? 払う必要があります。住民税は前の年の所得にかかる税金なので、退職したあとも支払いが続きます。
Q. 転職先で天引きされているのに、納付書も届きました。二重払いでは? 二重払いにはなりません。天引きに切り替わるまでの分が、納付書で請求されている場合がほとんどです。金額と期間を確認し、不明な点は市区町村の住民税の担当窓口に問い合わせてください。
Q. 年収が下がったので、住民税を今年の年収で計算し直してもらえますか? 住民税は前の年の所得で計算するルールなので、今年の年収で計算し直すことはできません。失業などで納付が難しい場合は、市区町村に減免や分割納付を相談できることがあります。
Q. 次の仕事が決まらないまま退職しました。住民税はどうなりますか? 自分で納付書で払う(普通徴収)ことになります。1月〜4月の退職なら、最後の給与からまとめて引かれている場合もあります。
まとめ
- 住民税は前の年の所得にかかる後払い。転職しても額はすぐには変わらず、払い方が変わるだけ
- 転職先で天引きを続けたいなら、給与所得者異動届出書の手続きを前の会社に頼む
- 1月〜4月の退職は、最後の給与から残りをまとめて引かれる
- 年収が下がる転職では、住民税と保育料が1年以上遅れて下がる。転職を決める前に、最初の1年の家計を試算する
年収が下がる転職は、子育て中の家族にとって正しい選択になることもあります。大事なのは、下がった収入で暮らせるかではなく、「最初の1年」を乗り越えられるかを先に確かめておくことです。
参考にした情報
※本記事の制度に関する記述は、2026年9月26日時点で確認したものです。試算は概算で、実際の税額は控除の内容や自治体によって変わります。正確な金額は、お住まいの市区町村にご確認ください。
